ダイバーシティ・サポーター養成講座のご報告

2012-11-27

ダイバーシティとやまでは、10月27日(土)から11月25日(日)にかけて、全4回で、「ダイバーシティ・サポーター養成講座」を開催しました。
各講座とも充実した内容で、毎回、受講生のみなさんとともに、新しい学びをいただきました。
毎回、3時間~4時間の濃密な内容でしたので、以下、ほんのエッセンスとなりますが、ご報告いたします。

2012/10/27
【第1回(概論)「人口減少社会を迎え、人的多様性配慮型社会に求められる人材とは」講師:一般財団法人ダイバーシティ研究所 客員研究員 柴垣 禎】

柴垣さんからは、現在、人口変動社会をはじめ、人口構造上の産業の衰退や、うつや自殺者の増加など、日本が直面している課題は数多く、極めて深刻な未来像しか描けていないことから、マイナス面をプラス面へと価値転換を図る見方をし、発想を転換して、ちがいを優位性として捉える必要性があるとの話をいただきました。
こうしたちがいを優位性と捉え、ダイバーシティを推進する取組みの必要性は政府(経済産業省)や経済界の一部ではすでに提言されてきているが、女性躍進などの一部のダイバーシティへの取組みが始まったばかりであり、今後、さらに面的な広がりのためには、ISO26000などの活用も必要とのことです。確かに!
さらに、企業や障害福祉の現場での取組み事例を紹介し、「ダイバーシティは決して難しいものではなく、誰もがダイバーシティへの取り組みに参加することができる。企業であっても本業を通じてダイバーシティへ取組むことにより、従業員のモチベーションの向上につながっている」と結ばれました。
養成講座の後半は、ワークショップが開催され、参加者全員で様々な多様性であるダイバーシティを洗い出し、後続のワークショップのための意識共有を行いました。

2012/11/10
【第2回(各論①)「障害福祉とソーシャルインクルージョン」講師:めひの野園うさか寮施設長 東 真盛/「各論②「外国人をめぐる諸制度と多文化共生」講師:富山県国際・日本海政策課国際協力係長 山元 真弓】

第2回は、めひの野園の東真盛うさか寮施設長から、障害福祉制度とソーシャルインクルージョンについて、富山県国際日本海政策課の山元真弓国際協力係長から、外国人をめぐる諸制度と多文化共生について、それぞれの分野の概論と現状について理解を深める講義がありました。

東さんからは、現在、日本政府は障害者権利条約批准に向けて、国内法の整備が進められているが、中でも、障害という考え方について、障害は人に起因するという医学モデルではなく、環境因子が障害を生む社会モデルの考え方を取り込んでいくことが大切な視点になるとのことだという話をいただきました。また、自閉症や発達障害の人は、他の人には見られない優れた点がいくつもあり、歴史上の様々な人、現代に活躍する人にも発達障害の人が多くいるとのことです。そして、これらの人が言うところでは、周囲の環境や人の理解があったからこそ、今の自分があるとのことです。なるほど!
発達障害の特長の特徴として、周囲から見えにくいまたは、まったく見えないということがあるため、周囲人の理解が必要になるとのことです。そして、こうした様々な特長を持った人たちが住みやすい社会を創っていく、すなわちソーシャルインクルージョンを進めることが、これからの社会に求められる鍵となるだろうとのことでした。

引き続き、山元さんからは、日本の地域に住む外国人について、国内の労働力不足を補う形で増加してきており、富山県においても外国人は20代~40代の働き盛りの労働力人口の層が多く占めている現状にあるという話をいただきました。このため、外国籍の子どもも多く、日本語指導が必要な生徒も数多くいるとのことです。そして、年を追って、中学生が占める割合も増加してきており、地域にとって、こうした子どもたちへの教育についても大きな課題があり、県の多文化共生の施策とひとつになっているとのこと。こうした在住外国人との共生が、将来の地域の活力の原動力になっていくとのことでした。なっとく!
また、韓国の多文化共生の現状が事例紹介としてあり、韓国は日本よりも多文化家族化が進展しており、それゆえに様々な課題が顕在化しているため、国家戦略として多文化共生を推進しているとのことでした。具体的な事例を通じて、韓国と日本との比較から見えてくる課題の違いに、これからの日本に求められる多文化共生の在り方も見えてくるようでした。

後半のワークショップは、グループワークにより、参加者が属する企業活動をダイバーシティ化し、グループ単位で発表を行いました。実社会をダイバーシティ化するという作業を通じて、さまざまな視点が提示されました。

2012/11/17
【第3回(実践事例紹介)「ひとりひとりが輝ける組織づくりとは」講師:(株)ウエルネスサプライ代表取締役社長 代表取締役社長 薄井 修司】

薄井さんからは、組織の構成員のひとりひとりが輝いていくためには、経営者が熱い想いを持っていること、そして、その想いを100%伝えきる努力をしていくことが大切だという話をいただきました。「同じ人間はいないのだから、相手に80%も伝わればいいだろう」という思いをもって接していると、経営者の思いがお客様に届くまで、部下の人数分だけ「80%×80%×・・・・」という計算式が続き、お客様に届く前に25%ほどにも落ちてしまうとのことです。なんてこと・・・!
薄井さんは、阪神淡路大震災をはじめ、さまざまな困難に直面しますが、従来型の組織運営ではなく、お客様が施設を気持ちよく楽しみたいという気持ちと、運営スタッフがお客様へと喜びを届けたいという気持ちとをマッチングしていくためには、どういうやり方ができるのか?という視点で、一貫して組織運営を行います。
「社員のやる気を引き出す」
この言葉は、何回も何十回も聞いたことがあるフレーズだと思います。しかし、薄井氏が実践してきた手法は、誰もが経験したことがあるにも関わらず、会社内では経験したことがないことを会社内に取り込み、会社が大家族化していくという手法でした。ひとりひとり、バックボーンが異なる社員が、ひとつの家族のように想いを共有化していく。これこそ、ダイバーシティのひとつの到達点といえるでしょう。

養成講座の後半のワークショップは、参加者が多様性に配慮した事業を起業化していくという課題に取り組み、グループ単位で発表を行いました。
短い時間にも関わらず、とても素晴らしいプレゼンでした。

2012/11/25
【第4回(ダイバーシティとやま設立1周年記念フォーラム)「ダイバーシティなくして地域社会の未来なし」講師:一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事 田村 太郎/「見方を味方に世界を変える」講師:大阪府立八尾北広報学校 家庭科教諭 南野 忠晴】

第4回となる講座は、団体設立1周年記念フォーラムとして併催し、一般財団法人ダイバーシティ研究所の田村太郎代表理事から地域社会の生き残りのためにダイバーシティの視点が不可欠であるということと、大阪府八尾北高等学校の南野忠晴教諭から、ダイバーシティの推進のためには、一人一人の個人が多様性を持つダイバーシティの一員であるという自覚が必要という話をいただきました。

田村さんからは、現在、日本や世界は人口変動社会を迎え、労働者人口の減少に直面していることから、これまでの社会保障制度や経済の仕組みが維持できなくなると予測され、地域社会の衰退を回避するためには、これまで必ずしも十分に活用されてこなかった人材ともいえる女性や障害者、外国人といった様々な個性を活かしていくための社会づくり、すなわち、ダイバーシティに配慮した社会づくりが必要であるとの話をいただきました。
2010年に発行されたISO26000では、持続可能な社会のための国際ルールとしてのガイドラインが示され、これを遵守していくことが、今後の地域社会を作っていくベースになるということです。ISO26000では、あらゆる主体が社会的責任(SR)を果たすことを必要とされるが、これはサプライチェーンにより、大企業のみならず、地域の中小企業にも求められることになるということです。そして、ISO2600が課題としているキーワードのほとんどがダイバーシティの視点から読み解くことができるものであるとのこと。ふむふむ、みんなが正直になっていくということですね!
このために、社会的マイノリティはもちろん、マジョリティも含めた社会全体で、多様な担い手が多様な働き方、生き方が実現できるように、社会全体を変えていく必要があるとのことでした。

南野さんからは、学校教育の現場から、単に正解を求めるだけでは人間を育てていくのは困難であり、生活力の向上が人間力を高めていくことだとのお話をいただきました。
南野先生は、多くの教科では、テストなどを通じて、不正解をなくしていく努力が行われ、大多数と同じ考え方をしていくためのトレーニングがなされているのではないかとの疑問を持ったとのことです。こうしたとき、「パンツの正しいたたみ方」に悩む男性教員に出会います。パンツのたたみ方には正解はないし、人それぞれの価値観やこれまでの生き方から導き出されたものであって、正解がない以上は、これは話し合って多様な価値観を認め合うしかないと気付いたとのことです。さらに、家事や洗濯は奥さん任せといった依存や支配の関係ではなく、互いの生活力を向上させ、互いに自立していくことが、真の共生関係を築いていくのではないかとのことです。自分自身の生活の中にダイバーシティを推進させる活路があったなんて!難問氷解です!!
こうして、多様な存在が、多様な生き方を実践し、ロールモデルとなっていくことで、自分自身が多様な存在の一部であり、自分の中の多様性を実現していくことになるとのことでした。とても味わい深く琴線に触れるお話でした。
講演の最後には、「天国での回想」として、ステキなお話もありましたが、あまりにステキなので、この話は南野さんから直接、お聞きくださいませ。

養成講座の後半は、ハワードさんのファシリによる本邦初公開の「ダイバーシティ・フューチャーセンター」と題したテーマのワークショップを開催し、2名の講師を交えた県内若手起業家等との対話を通じて、会場全体のグループワークにより、ダイバーシティが進展していること・進展していないことについて、未来志向のグループ発表を行いました。

今回の養成講座は4回シリーズで開催され、未来のステークホルダーとなる心強いサポーターが誕生しました。これからも、ダイバーシティとやまは、みなさんとともに、地域社会のダイバーシティの推進に、一層、尽力していきます。



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