設立記念フォーラム2(概要)

2011-11-24

NGOダイバーシティとやま設立記念フォーラム開催結果報告

設立記念フォーラムの開催にあたり、私たちスタッフに一番多く寄せられた言葉。
それは「ダイバーシティって何?」でした。
それにも関わらず、本当に多くの人にご来場いただき、スタッフ一同、
とても感激しています。みなさんに支えられ、NGOダイバーシティとやまは
船出することができました。どうもありがとうございました。
みなさんからは、たくさんの励ましの声をいただきましたが、
「新しい時代の幕開けを感じた」という方もあり、これからも、みなさんとともに
歩んで行きたいなと思えるフォーラムとなりました。

ごく一部分に過ぎませんが、フォーラムの開催結果をご報告させていただきます。

第1部
○「ダイバーシティとやまが目指すもの~多文化共生なとやまの未来」代表 宮田

宮田からは、自身の日本語教師としての経験から、これまで外国人の学生の
教育や生活上の悩みなどに寄り添ってきたこと、そしてボランティアとしても
外国人の小中学生と向き合ってきたことから、「外国人が日本に住む」という難しさを
目の当たりにしてきたことをお伝えしました。
また、宮田は発達障害児にも同じ境遇があること、人には理解されにくい、
様々な困難を抱えている人がいることを、映像を使って会場に伝えました。
世界にはいろんな人がいる、いろんなちがいを持っている人がいる、
いろんなちがいがあるからこそ、すべての人が支えあって、
笑いあって楽しく生きる社会ができる。
そんなメッセージをお伝えしました。
静かで圧倒的に押し寄せる感動が会場を満たしました。

○「人の多様性が地域社会の未来を築く~diversity&Inclusion」
一般財団法人ダイバーシティ研究所 柴垣

ダイバーシティ研究所の客員研究員であり、NGOダイバーシティとやまの
副代表であり、この記事を執筆している私(柴垣)から、まだまだ耳馴染みのない
「ダイバーシティ」の理念的な部分をお伝えしました。
なぜ、これからの地域社会を考えるときに、ダイバーシティの視点が必要なのか、
マクロ的な視点から定量的に導き出せる未来の姿を提起しました。
そして、ダイバーシティの主役は多様な存在である個々人であり、
多様な個々人が存在しているからこそ、しなやかな地域づくりができる。
そして、単一の価値観を持つのではなく、重層した価値観をスタンダードに
していくことが必要だということを提言しました。

第2部
○「+思考で障がいが活きる経営戦略」 戸枝陽基さん

戸枝さんは言います。「福祉の王様は障害者福祉だ」と。
こども、思春期、おとな、お年寄り、そして亡くなるまで
福祉の範囲は広い。でも、年代で輪切りにしてはいけない。
人生トータルで福祉を考えなくてはならないし、もっとも
シビアな部分から考えていくことが福祉の王様たる所以だと。
障がいを持っている人にも、それぞれの個性や家庭や背景が
あります。個別輪切りで捉えてもイカンと。
また、障害者の社会復帰トレーニングについても疑問を
呈されます。戸枝さんいわく
「これは何のためのトレーニングですか?」
社会復帰施設の人いわく
「社会復帰、就職に向けたトレーニングです」と。
またまた戸枝さんいわく
「このトレーニングを続けて、就職できますか?」
社会復帰施設の人いわく
「いや~、無理でしょう」
またまた戸枝さんいわく
「じゃ、このトレーニングは何のためのトレーニングですか?」
社旗復帰施設の人いわく
「社会復帰のためです」と。
いったい、何のために作業しているのかということもありますし、
トレーニングに入る前に、「このトレーニングをすれば、
こう改善されますよ」という説明がないということも
指摘されます。
これは何も、作業所の人に問題があるわけではなく、
「障害者というものは、こういうものだ」
という刷り込みがあるからだと言うことです。
私たちは、無自覚に、障害者は就労できない、だから、就業の
トレーニングを受けなくてはならない、そして、就業トレーニング
だから、高い報酬も得られないという刷り込みを持ってしまっている。
と言います。
「周囲の人が考え、障がいのある人にも役割を持たせる
社会でないと」
戸枝さんは、障がいのある人の特性を見つけて、喫茶店や
ラーメン屋、キノコの栽培なども手掛けています。どんな
人でも働ける場があるからと仰います。
「例えば、生存機能が100点中5点しかない人がいるとする。
普通だったら5%しか機能しない人は何もできない人間に
なってしまう。だが、5%動いている、心臓が動いている限り
仕事は見つけられるはずだ。」
「すべての人が、生きている限り、可能性がある」
素晴らしいお話でした。
最後に、戸枝さんは、こうお話しされました。
「ちがいばかりを探すのではなく、共通項を見つける。
共通項を見つけて、つながりの輪をひろげる。こうした
輪を広げていくのが大切です。今日はダイバーシティという
点で、ひとつの集まりがあり、富山の場に、ひとつの
しずくが落ちた。
このしずくによってできた波紋は、ひとりひとりが受け止めて、
広げていくもの。
今日の参加者は、富山を変えていく波紋のひとつとなるでしょう。」

○「外国にルーツを持つ子供たちの今と未来」 小島祥美さん
小島さんは、ご自身が学校に通っていたころ、毎日、学校に行くのが
楽しくて楽しくて仕方がなかったとのことで、小学校の先生に
なったそうです。
ですが、教壇に立ったときに外国籍児童を担当して、
コミュニケーションもままならず、そして、彼らに元気がないことに
ショックを受け、「学校がつまらない」と言う彼らのこと、彼らの背景を、
まったく知らない自分に気づき、南米へと一人旅に出かけたそうです。
阪神淡路大震災が起きたとき、神戸へ行き、被災した外国人住民のために
多言語情報発信などの活動に参加され、そうした中で、学校に
通っていない(不就学の)外国籍の子どもに出会い、またまた
衝撃を受けたとのことです。
ショックの多い人生ですね。
自治体では不就学の子どもの実態を把握しておらず、不就学の
子どもは「社会からまったく見えない」ことに驚き、どうしたら
社会から見える存在になるのか、笑顔が見えるようになるのか、
悩みに悩んだ末、「私が全員に会いに行けばいいんだ!」と
思ったそうです。
しかしながら、そうした小島さんの考えに共感を示してくれる自治体に
出会うことができず、ようやくその必要性を理解してくださったのが、
岐阜県可児市の皆さんでした。それを機に、小島さんは2003年に可児市に引っ越され
たそうです。
このとき可児市では16人に1人が外国人住民で、アンケートでは本当の
声が聞こえないことから、小島さんは家庭訪問を実施されました。
訪問先の外国人の人はみなさん協力的で、小島さんはご飯をよく
ご馳走になったそうです。
この家庭訪問から学校に通っていない子どもたちのさまざまな
境遇を知ることになりました。働いている子、妊娠している子、
出産した子、また、就学の状況も様々であることがわかりました。
子どもたちがドロップアウトした最大の理由は、将来に夢を
持っていないことでした。子どもたちは小島さんに訴えました。
「僕らは一生懸命、日本語の勉強をしてる」
「だけど、どんなに一生懸命勉強しても、テストに出ないじゃないか」
「成績にも現れない」
「勉強しなくても働けるし、みんな働いてる」
「勉強して大学に行った外国人がいるのか」
「正規雇用されている外国人がいるのか」
「オマエの言っていることは全部ウソだ!」
こうした子どもたちの声を真摯に受け止め、小島さんは子どもたちが
夢が持てるよう様々な機関と連携を深め、また、小島さん自身が
コーディネーターとして可児市に採用され、ついに、可児市長が
「外国人児童の不就学ゼロ宣言」を打ち出すことになりました。
今日出来たことを喜び、具体的な目標を作っていく、そして
進路や選択肢を広げていく、こうしたことを子どもたちに見せていく
ことで1年後には、1割の子どもが不就学だった可児市で、公立中学校からドロッ
プアウトすることが多かった可児市で、不就学がゼロとなり、
中3の外国人生徒全員が卒業するまでに至りました。感動的です。
小島さんは言います。
「自己肯定感を持つことが大切。それにはダイバーシティの
視点で、環境が変わっていくことが必要」と。
今、小島さんは、映像作りというツールを使って、子どもたちが
将来の夢を語り、外国人の子ども達の姿を社会にみえることを
されています。ある子どもは言いました。
「多文化共生は当たり前のこと。私の夢は多文化ソーシャルワーカーになることです」と。

 

 

 

最後に。
パネルディスカッションも本当に楽しく、いろんな意見がありましたが、
これは省略させていただきます。
また次回、会場のみなさんに出会えることを楽しみにしています。
今回、お会いすることが出来なかった方、フォーラムの概要をお読みになり、
ダイバーシティに関心をもたれた方、ぜひ、私たちにご連絡をください。
一緒に「ダイバーシティなとやま」をつくっていきましょう!



Copyright© ダイバーシティ All Rights Reserved.



発達障害