川北秀人氏セミナー「事業と団体を続けるための基礎を再確認しよう!」開催のご報告

2014-12-06

2014年12月3日(水)、川北秀人さんのセミナー「事業と団体を続けるための基礎を再確認しよう!」を市民活動サポートセンターとやまさんとのW主催で開催しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者の川北秀人さんはNPOや社会起業家支援の第一人者であり、NPOと行政との協働の基盤づくりや、環境・社会コミュニケーションの推進支援で全国各地を飛び回っていらっしゃる超多忙な方です。

 

舌鋒鋭く、出足から火を噴く川北トーク。

「いつもは『これだけ話してください』と、依頼主からテーマを限定されることがほとんどですが、今回は、『川北さんがしゃべりたいことを話してください』という依頼でしたので、みなさんにお伝えしたい内容を、通常9時間かかるところ、今日は2時間のダイジェスト版でお話しします」という出血大サービスのアナウンスから始まったこのセミナー。受講者側の状況や希望に応じた超お得なセミナーになりました。

テキストは川北さんがお書きになった『ソシオ・マネジメント』創刊号「社会に挑む5つの原則、組織を育てる12のチカラ」NPO【または「市民団体」】や社会事業家には必読の書です!

 

18時半スタートのセミナーでしたが、本日の川北さん、実はダブルヘッダーの登板で、このセミナーの前に、某自治体職員向けの研修の講師をしてきたとのこと。まずは、このあたりの話からスタートです。

 

現在、深刻な人口減少と少子高齢化社会に直面している日本社会。この某自治体は他の自治体に比べて、約10年も先行してその影響が出てくるということを、統計データを使用して理論的に説明します。ただ高齢者が多くなるとか、生産人口に比して高齢者の比率が高くなるというだけではなく、ひとり暮らしの独居高齢者数や、そのうち運転免許を持つ人の比率など具体的な生活像を通して、某自治体職員に伝えてきたとのことです。しかし、危機感が薄いのか、確かな手応えが感じられなかったとのこと。何故だ!某自治体の未来に危機感を感じつつ、その危機感を、ひしひしと私たちに伝えてくださいます。

 

そもそもNPOってなんだ?公益って何?
まずは、私たちの足元、基本的認識から始まります。とある外国人が、こう言ったそうです。「日本にはNPOが多いよね。だって、No Plan Organizationばかりでしょ」と。公益とは、「不特定多数が対象」と理解するのではなく、たとえ特定された少数でも、不可代替性の高い活動も公益的。山間部や離島のガソリンスタンドは、不特定で多数の車にガソリンを供給するスタンドではないが、なくてはならない存在としてそこにある。大切なのは、求められ、開かれていること。ここが基本的なスタンスとして明らかにしておくべきことであり、私たちの活動は、誰かが必要としていることとして行っている活動であって、自分たちが「必要だろう」と想像して活動するものではない。NPOとは、民間で、誰かが必要としているニーズ(公益)に対して、事業を通じて生み出した利益を自分たちだけに分配するするのではなく、社会に再投資し続ける活動を行っているチームということです。
まず、この基本的な立ち位置を整理するだけで、NPO周辺にもやもやと立ち込めていた靄がかなりスッキリします。

 

熱い想いは必要か?
とかくNPOに携わる人には熱い想いが付き物(憑き物?笑)。これはとても大切な必要不可欠なもの。ただし、「想い」だけでは社会への責任は果たせない。例えば、各種の助成金を活用しているNPOが多々ありますが、川北さんは、そうした企業や行政などによる助成事業の審査や評価にも携わっています。寄付者や株主、納税者に対する説明責任を負う審査委員の立場から言うと、申請書から「想い」を汲み取って、大切なお金を配分することは、とてもできないと。紙の上の文字だけから想いを読み取るなんて、神様じゃないし(笑)。社会的なニーズが明確で、それに取り組むための手段が具体的で、できれば、団体や集まっている人にも実績があって、チームとして実施できることが明瞭に示されたものでないと、大切な募金を配分することは、とてもできないと言います。さらに言うなら、その事業を実施した結果を報告書にまとめ、それをテキストとして他の団体にも共有することにより、事業の効果が長持ちするような取り組みになっていることが望ましいと。考えてみれば、当たり前のことで、振り返ってみると、昨今の助成金漬けになっているNPO活動がいかに多いかということも憂慮すべきことでしょう。

 

 

私たちの活動の精度を高める「PDRF+RT」とは?

川北さんがあるアメリカの市民団体を訪問したときのこと。よれたジーンズに擦れた革ジャン、根元まで火の点いたタバコを指に挟んだミック・ジャガーのようなオジサンに言われたそうです。「『しらべる』っつーのを難しく考え過ぎてんだよ。『しらべる』ってのは、『かぞえる』、『くらべる』、『たずねる』ってことだろ」と。あまりに簡単すぎて、しかも核心を突いていて、これを聞いたときに、川北さんはイスから転げ落ちたと。ライクアローリングストーン!
最初の話に戻りますが、少子高齢化の進展を説明するときに、まず人口を「かぞえる」。そして、過去の実績から将来推計を、さらに、他の自治体とも「くらべる」。では、当該自治体はどう考えているのか、他の自治体ではどういう取組みがあるのか「たずねる」。そういうことが「しらべる」ということだと。簡単ですが、とても明瞭かつ説得力があります。
こうして、私たちの活動の精度を高めていくためには、まずは「しらべる」ことから始まり、計画をつくり(Plan)、その計画が適切かどうかためし(Test)、それを実行し(Do)、検証して(Review)、メンバーや社会と共有(Feedback)していくことが肝要だと。

 

なんとなく対応策を打ってませんか?
私たちは、社会に必要とされるニーズに対して活動を行っている(と思っている)わけですが、それは本当に課題に対応した活動になっているのでしょうか。もしかすると、その課題の原因を取り違えているために、その活動が、ニーズに対応した活動にはなっていないという事態に陥っているかもしれません。
とある企業での話。機械製造の工程で、ビスが緩んでしまうという事案が発生。現にビスが緩んでいる事実がある以上、きつく、しっかりと締めれば良かろうと管理職が指示を出した。しかし、その上司は、これをよしとせず、「原因もわからないうちに対策を打つな。小学生にでもわかるレベルまで原因を調べろ」と指示を出します。
管理職が現場に入り、実際の工程や機材を調べていくと、ベルトコンベアに付いている不審なシミを発見します。さらにそれを辿っていくと、エアコンのダクトの冷却部分に結露した油が落下し、ビスを留める穴に付着。これがビスの緩みとなっていたことがわかります。
「なぜそうなっているのか」の「なぜ」を、何度も何度も繰り返して問うていく。そして活動の焦点をクリアにしていくことが必要なのです。

 

見た目は同じでも中味が違う!
例えば、日本人向けの韓国語教室。韓国語を教える人がいて、韓国語を学ぶ人がいるという場。見た目は同じでも、カルチャーセンターと、韓国人ツーリスト向けにまちの歴史や文化を伝えるための韓国語ガイド養成講座とでは、目的がまったく違います。前者は自分自身のためである以上、自費で賄うものですが、後者はまさに「求められていることに開かれた」ニーズに応える公益であり、地域貢献活動として寄付や助成などを求める意義を持ちます。
「子どもの貧困」が深刻化する今、家庭の経済的な理由から進学を諦める子どもも増えている。そこでひとりあたり月2万円、年間25万円の支援ができれば、放課後学習の機会を提供できる。子どもの数がはっきりしていて、金額もゴールも明確。これを募金というフレームで、貧困の世帯間連鎖を断ち切るために、東日本大震災で教育機会が失われた人たちに向けて、活動を行う【http://cfc.or.jp/】。目的と現象と原因と対象者が明確になっていることが、共感を呼ぶ公益活動なのです。

 

仲間を作る
とかくNPO活動は難しい。営利を目的とする企業であれば、分配する利益を大きくするために規模を大きくしていけばいいのですが、収益を得るのが難しい事業で成果を出し続けるNPOのマネジメントは本当に難しいと、名前を聞けば誰でも知っている高名な経営学者も指摘しているとのことです。
NPOの活動や組織をマネジメントしていくために、事業目的や計画を明確にし、体制を作っていく必要がありますが、しかしNPOの目的は、決して団体を大きくすることではありません。最小の力や資源で最適な成果を生むために、自分たちのチームだけでやっていくのではなく、仲間や他の団体と一緒にやっていく、協働していく、力を借りるという発想や姿勢が必要です。自分たちのスタッフの数や運営規模が変わらなければ、運営に割く労力も変わりません。運営に割く労力を変えずに事業の質や量を高めていくために、もっとも効率的なやり方が、仲間を作るということ。今日のセミナーに参加したメンバーは、明日の仲間であり、事業のパートナー。
とても有意義なメンバーで時間を共有できたセミナーになりました。
川北さん、共同主催の市民活動サポートセンターとやまさん、参加者のみなさん、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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