共創の未来セミナー「外国人住民がもっと地域に溶け込み、地域で活躍してもらうためには?」開催報告

2024-08-28

「誰もが個人として尊重される地域社会の実現へ」として共創の富山実行委員会が作られ、その第一回目のセミナー「外国人住民がもっと地域に溶け込み、地域で活躍してもらうためには?」が8月23日(金)に開催されました。

第1部は、外国人の地域住民を参画主体とした「外国人コミュニティ・リーダー(CL)制度」を構築され、福井県内で展開されている福井県国際交流協会の飯田隼人さんからお話をお聞きしました。制度立ち上げ以降、さまざまな紆余曲折や立ち行かない場面に直面しながらも、各コミュニティ・リーダーが動きやすいフィールドづくりに尽力されてきました。今では県や市が流す情報をそれぞれのコミュニティのSNSに流すだけではなく、自ら情報を集めてそれをSNS発信するのが習慣化しているそうです。コミュニティ・リーダーが自発的な活動を行い、県や市に依存した状態からは脱しています。能登半島地震の時も発災後20分でコミュニティ・リーダーによるテレビ電話会議が始まるなど、情報をスムーズに流す仕組みができていて、参考になることがたくさんありました。

第2部は、外国人住民、行政、自治会、学生も交えてのパネルディスカッションを行いました。ファシリテーターはダイバーシティとやま事務局長の柴垣禎、パネリストはNPO法人富山国際社会団体のナワブ・アリさん、合同会社ダンダン代表のクエン・タン・ダンさん、射水市市民生活部市民活躍・文化課交流促進係長の山崎綾子さん、太閤山地域振興会長の森田正範さん、富山大学国際医療研究会KIKの宮澤正咲さん、そして第一部の登壇者の飯田さんというメンバー。外国人住民、そして行政、自治会、学生、それぞれの立場の人に登壇してもらうことで、出席者の皆さんに新たな視点を見つけてもらいたいという気持ちもありました。パネリストのみなさんにはそれぞれの活動やその立ち位置から見えてくることをお話いただき、ディスカッションしました。

外国人住民のみならず、なぜ、日本の地域社会が不活性化しているのか、自治会は「外国人住民とは接点がない」云々や、行政機関は「外国人住民が増えることのより情報伝達が難しくなる」等のことが各地から報告されています。 しかしながら、今回登壇いただいたパネラーのみなさんからは、「従来型の同じイベントを繰り返しても地域は活性化しない」「コロナ禍を経て視点を真逆に移すことが出来て活性化した」「日本人が当たり前と思っていることは、そうではなくて新鮮なことだと気付かされた」「外国人ならではの視点を持つことで、地域の見え方や今後のあり方も変化していきそう」等といった発言をいただきました。 人の多様性に対応していくダイバーシティや多文化共生は、スローガンやキャッチコピーとしては、とてもわかりやすいし、誰もが同意するところかと思います。 ですが、いざ、実践となると、なかなか難しい場面も出てくるのも事実です。 そんな中、パネラーのお一人の現役医大生の宮澤さんが多文化共生に必要なこととしてパネルの最後に発言されたのは、「ご近所とのつながり」とのことでした。「PTAの古紙回収って何曜日ですか」 「古紙回収とPTAの関係がわかりません」 「整理券ってなんですか」云々 といったようなことは、 行政やら、企業が特別に介入すべきことではなくて、 地域社会で何とかしていこうよ! ということが一緒に暮らしていく中では大切です。今回のパネラーのパキスタンのアリさん、ベトナムのダンさんはそれぞれに、自分が暮らす町内で近所の人と関係を築いて来られました。アリさんが富山に来たばかりの30年前は近所の人と今のように仲良かったわけではありません。外国人が増えると犯罪も増えると心配する人もいたし、ゴミの出し方について指摘する人もいました。でも、一緒に防犯パトロールに出たり、側溝掃除に参加したり、ゴミの出し方は新たに越してきた人にはウルドゥ語で説明してあるものを作って町内会長さんと一緒に配りに行ったり、そういう地道な積み重ねで少しずつ「ご近所のつながり」を紡いできたのです。今では町内で頼られる存在になったアリさん。ダンさんも近所の人を招いてホームパーティをしたり、学校の行事には積極的に参加したり、つながりをとても大切にしています。太閤山地域振興会の森田さんは、地域振興会の柱に多文化共生を掲げています。でもそれは外国人との共生だけではなく、地域に住む障害者、高齢者、子どもたち、みんなひっくるめての多文化共生なんだとおっしゃいます。射水市の山崎さんも行政として、もっとやれることはないか、外国人キーパーソンの皆さんへの働きかけ、地域振興会への働きかけをこれからもっとやっていきたいとおっしゃいました。そして、前述の富大生の宮澤さんが知らないことを知るって楽しい!へー、知らなかった!おもしろい!を大切にしていきたい、というともすれば私たちが忘れがちな、「あ、そうだよね、出発点はそこだよね」という視点を思い出させてくれました。そして、みなさん「この地域で共に暮らす住民」として自ら実践されているのがとても印象的でした。

しかし、そうでない地域もまだまだたくさんあって、日本人と外国人住民の間に見えない壁ができているという現状も残念ながらあります。そこにどう踏み込んでいくのか、それにはやはり少しずつでもお互いを知ることから始めるという地道な方法が結局はいちばんなのではないかと思います。外国人住民が日本のルールや文化を知ることが大切というのはよく言われることですが、私たち日本人も外国人住民のことを知るのはとても大切だと思うのです。それは文化や習慣のことだけではありません。例えば、富山県の2024年上半期の輸出額総額は1401億円そのうち中古車の輸出額は435億円、全輸出額の3割を占めます。その中古車輸出の多くの部分に関わっているのが射水に住む外国人住民です。つまり、それは彼らが富山に多くの税金を納めているということなのです。彼らがたくさん納税しているのを私たち日本人側はどれだけの人が知っているでしょうか。そういうことも含めてお互いを知る、そして身近なご近所さんのつきあいから始める、それが地域社会に外国人住民が増えていく時に大事ではないかと思います。

ちなみに今回のセミナーの第3部では被災地の炊き出しでも大好評だったパキスタンカレーを食べながら、来場した皆さんと一緒に意見交換会でした。その場でも「富山に来てエジプトの人に初めて会いました!」「えー?そうなの?知らなかった!」「今度一緒に料理しましょう」等々いろんな声が聞こえてきました。

その声を聞きながら思ったことは、NGOダイバーシティとやまや今回の共創の未来実行委員会が大切にすべきは、お互いを知る第一歩の潤滑油的役割を担うことではないかと。まず知ってもらう、そしてそこで気づいた「あれ?」やモヤモヤを話し合う場を提供する、それを大切にしていきたいと思っています。

NHK富山の放送はこちら⇒https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20240824/3060017704.html



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