4月, 2015年

世界自閉症啓発デーLight It Up Blue「ちょっとフシギ、とってもステキ 自閉症・発達障がい」開催のご報告

2015-04-08

今年で4年目を迎える五箇山菅沼集落での世界自閉症啓発デー。4年連続の晴天開催です。

 

 

 

 

 

 

 

NGOダイバーシティとやまの年度初めの事業としても定着してまいりました。
今回もたくさんのみなさんに支えられての開催の運びとなりました。

まだ雪の残る中、青くライトアップされた合掌造りの中でのトークセッション。今回は「ちょっとフシギ、とってもステキ 自閉症・発達障がい」と題して、二人の語り部と一人のスペシャルゲストを迎えての開催となりました。

語り部は、社会福祉法人めひの野園うさか寮施設長の東真盛さん、富山大学人間発達科学部准教授の水内豊和さん。そしてスペシャルゲストはナント!南砺のナント市長の田中幹夫さんです。
このイベントの開催のチラシには「4月2日は、青のTシャツや帽子、小物を身につけて自閉症を応援しよう!」と書いてあるのですが、田中市長はネクタイも靴下も青というイデタチです。さすがです。

今回のトークセッションの開催前からの盛り上がりについては、協力団体のとやまcocolo会さんのfacebookに、こんな風に掲載されています。

【雪の下赤かぶ掘り&水内ゼミワークショップ】
1メートル以上積もった雪の下にある赤かぶを宝探しの様に掘り当てたときの笑顔。水内ゼミワークショップでの、言葉を使わないゲームでのコミュニケーション。美味しい夕食を食べながら交わした会話。常に花椿かがやきの利用者さんたちが、ムードメーカーとなって和ませてくださいました。cocolo会の方にも喜んでいただけたようです。また来年もやりましょう!自閉症についての理解が広まりますように。

 

(写真提供:高田ユースケ氏)

 

セッションの会場前に参加者が集まっている様子はこちらの北日本新聞の記事のとおりです。会場はいつもの食べ処吾郎平さんですが、記事にもあるとおり、60名近くのみなさんにご参加いただき、満員御礼状態です。

北日本新聞掲載記事

 

 

 

 

 

 

 

まずは、宮田代表からのあいさつに続き、田中市長から祝辞をいただきました。田中市長からは、祝辞のみならず、セッションでもたっぷりとお話しいただくことになりました。

さて、はじめの語り部は、水内豊和さんです。
水内さんは、大学で教鞭を取る一方、富山県自閉症協会の会長でもあり、公私ともに自閉症に取り組み、学問と生活を結び付けて私たちに語りかけてくださる人情味あふれる語り部です。

「今日はみなさんにもこのセッションに参加してほしいなと思っています」というメッセージから始まった水内さんの語り。
もう何年も続く水内さんと自閉症の方との年賀状の交換のお話です。「今年は中学2年生になりました」、数年後には「今年から仕事をしています」などなど、1年ごとの短い近況報告のやりとりです。一見、他愛のない心温まる年賀状でのやりとりに見えますが、自閉症の方の特徴もあるそうです。
例えば、水内さんが自閉症の方に「お元気ですか?」と書くと、その年賀状が届いた後すぐに電話がかかってきて、「はい、元気ですよ!」という答え。ちょっと変わってるなと思うかもしれませんが、水内さんの年賀状を、とっても素直に受け取ってくれているということがよくわかりますねとのこと。本当にそうです。自閉症の人は従業員として使いにくいという意見もありますが、水内さんが見せてくださった年賀状からは、仕事に対する熱意がとてもストレートに伝わってくる。そんなエピソードから、偏見に囚われず、そのままの姿を見てほしいと語られます。

また、自閉症に対してよく言われることとして、「コミュニケーションが取りにくい、社交性に欠ける」ということがありますが、さにあらず。決してそんなことはない。困り感がことさら高いわけではないということです。
表現豊かな例として、例えば、おぎのひとしさんのfacebookに掲載されている「きょうのあっくん」番外編の「虹色少年」の漫画を見せてくださいました。おぎのさんはプロの漫画家ですので、とてもステキな漫画を描かれているのですが、今日4月2日のタイミングで自閉症の漫画をfacebookに掲載されたとのことです。

「虹色少年」
http://www.ogino-hitoshi.com/spectrum/comicex.html#top

何よりも大切なのは、自閉症の特徴をよく知ることが大切だと語られます。水内さんが大学のゼミで学生とともに作っているのが自閉症の特徴を五七五で表現したカルタです。とても簡単な言葉でその特徴が表現されています。例えば、「『おなまえは?』かえすことばは『おなまえは?』」などなど。
時刻表を毎月2冊買う人もいます。1つは閲覧用、1つは保存用なのです。たくさん使い込み、正確に記憶していく一方で、大切にそれを持っておきたいという気持ち。カーナビのように道案内をしてくれる人。たくさんのトランプを持ちにくかったり、相手の視界を想像しにくいという理由からババ抜きが苦手な人が一方で、カードゲームの神経衰弱では格段の記憶力を発揮する。
人は誰しもネガティブな面、ポジティブな面がある。自閉症や発達障害だって同じ。これらの両面を見て、ポジティブな面を活かしていくことが大切なのです。
さて、水内ゼミで作っているカルタ。今日の日に取っておいたわけではないそうですが、「ご」「か」「や」「ま」から始まるカードはまだないそうです。みなさま、水内さんにメールで「ご・か・や・ま」のカルタを送ってくださると、採用されるかも?とのことですよ。
カルタで遊びながら自閉症の特徴を学ぶことができる。いい面を伸ばしていくことができる。まず、特徴を知ることが大切ですね。

次の語り部は、東真盛さんです。
東さんが日頃から思っていることは、まずは自閉症の困難さが理解されること、そして支援できる人が増えることです。そんな風に社会が変わっていくと、愛情あふれる素敵な社会になるのでは?という思いを持っています。

とはいうものの、自閉症の一人ひとり、みんな特徴が異なっています。虹のスペクトラムのように症状がさまざまなのです。例えば、「自閉症=レインマン」というイメージが強いかもしれませんが、本当にさまざまな特徴を持っているものなのです。
こんな自閉症の人たちって、めずらしい人なのでしょうか?そうではありません。文部科学省の調査では、発達障害のある児童生徒数は6.5%とのことです。つまり、とても身近にいる人たちといえるのです。
また、病気や障害は「治す」ものだという漠然としたイメージを持っている人が多いのですが、自閉症や発達障害は「治す」のではなく「つきあう」障害ということです。そうしたとき、周りにいる人を含めて、環境を整えていくことが大切になってきます。

自閉症の彼らの行動には必ず理由があるのです。外から理解するのはなかなか難しいかもしれませんが。情報処理の仕方が違う。違う感覚や違う脳の使い方をしている。異常とは思わないでほしい。東さんはそう語ります。多数派のルールに乗っかりにくいのだと。そして、自由な情報処理の仕方を持っている彼らを小さな枠にあてはめようとし過ぎている。普通の枠に押し込めようとしていると。
一体、普通って何なんでしょうか?普通ということが、そんなに素晴らしく大切なことなんでしょうか。ここで東さんは問いかけます。普通であることに最善の価値を持っているとするならば、その褒め言葉というのはこうなりますよね、と。

「あなたは実に普通だね」

これって、褒め言葉でしょうか?褒め言葉というのは、「人並み外れているね」、「個性的だね」、そういうことでしょう。つまり、ちがっている感覚がステキということです。まさに「とってもステキな自閉症・発達障害」というわけです。
ここで、東さんは自閉症の作家の絵画の作品を見せてくださいます。とても素晴らしい作品なのですが、こうした作品を描くようになるに至るまでに、仮に普通の絵を描かせようとしていたら、これほどまでに個性的な絵を描けなかっただろうと語られます。
普通の枠に押し込め、普通であろうと強要しようとすると不幸な結果になってしまうのです。

東さん自身の経験も語っていただきました。東さんの体調不良に起因することなのですが、そのことが原因で、周囲に「わかってもらえない」「伝わらない」の積み重ねが生まれ、これの繰り返しが人や場に対する嫌悪感、不信感が生まれたとのことです。具体的には東さんに直接、お聞きになってくださるといいのですが、この話を聞いた会場の参加者は、まったくそのとおりという気持ちになりました。

相手の気持ちを想像する。私たちが彼らに寄り添おうとする。そして、相手の背景を知ることで、相手の気持ちを想像することができる。
その人の不機嫌な理由を考えてあげよう。愛の反対は無関心なのです。私たちは、あまりにも他人に無関心過ぎやしないか。
確かに、悲しみや苦しみを共感するのは難しいことです。あるとき東さんに対して投げかけられた言葉が今も東さんの胸に突き刺さっています。

「あなたは自分の子供を殺したいと思う親の気持ちがわかりますか?」

他人を理解していくためには、それぞれの立ち位置が異なることを考える必要があります。立ち位置が変わると正論が変わってしまうのです。
例えば、多動のお子さんを持ち、ちょっと目を離すだけど車に轢かれてしまいそうになるなど、神経をすり減らしている親が、あるとき子供の背中にリュックサック状の紐を付け、自分と距離が離れないような道具を目にします。これなら安心と自分の子供にそれを付けて、買い物に出かけていると、こんな言葉が投げかけられました。「犬や猫じゃあるまいし」と。
本当に衝動的に動き回る子供で、24時間目が離せないような生活を送っているのです。例えば、トイレもドアを開けて行っているような生活を送っているのです。苦肉の策で紐をつけてみた。そんな親に対して、事情や背景も知らずに「犬や猫じゃあるまいし」というのはどうでしょうか?しかし、話はここでは終わりません。その親は、東さんにこう告げたそうです。「世の中には優しい人もいるんだな」と思ったと。自分は疲労困憊していて、子供を紐でつなぐということが、「犬や猫と同じ扱いをしている」というものの見方ができなかったと。
みなさん、いかがでしょうか?

環境側が、わかりやすく情報を伝えることも大切です。そんな環境は、自閉症や発達障害の人だけでなく、みんながわかりやすく暮らしやすい環境であるでしょう。
例えば、新しい富山駅は、言葉がなくてもわかりやすい駅になっています。言葉だけではなく、いろいろなサインがあり、やさしい支援が行き届いています。
では、ハードが整えばそれでOKかというと、もちろんそれだけでは十分ではありません。自閉症・発達障害の特徴がさまざまですで、一人ひとりを理解しようとしていくことが大切なのです。
外からはわかりにくい障害。見るだけでは理解できない。しかし、人は障害者を理解しようとする姿勢を持てるはずだし、もし、そういった気持ちを持てないのであれば、もしかしたら、いわゆる健常者のほうが障害者ではないか?障害者の苦しみがわからないのは、それこそ障害なのではないか。そんな身につまされる語りが続きます。
お互いを尊重する心。理解しようとする姿勢、気持ちを共有すること。
子供が遊んでいる声がうるさいといったような話は枚挙にいとまがありません。人と人が心地よく生きていくためには寛容性が必要です。
障害は決して他人ごとではありません。必ず数%は生きにくさを持った人がいるし、家族が障害を持つこともあるし、自分がそうなっていくことも十分にある。他人事ではなく、自分たちが生きていく世界の中で、障害というものは、当たり前のことだと考えてくことが大切ではないかと語りが締めくくられました。

そして、スペシャルゲストの田中市長からは、先のお二人の語り部からインスパイアされたことを次々を語っていただきました。
現在、南砺市では、認知症サポーターを増やそうという取り組みをしているとのことです。一人ひとりが人生の最期をどういう形で閉じるのかを考えてみる。それを市民に聞いてみると、ほとんど100%近くの人が自宅で最期を迎えたいと考えていることがわかった。こういうことから、地域の中で最期を迎えることができる福祉を目指している。これが一番大切なまちづくりではないかと思っているとのことです。

このことには、障害者はもちろん、認知症も含めて、いろんな人がいるということを共有することが大切になってきます。いろんな人がいるということが頭でわかっても、いざ、接しようと思うと、戸惑うことも多い。このために、なんとなく接し方がわかる講習が必要ではないか。認知症サポーターもその取り組みのひとつになる。ただ、こうしたことは、全国レベルでの広い範囲で開催される講習会があればいいと思っているということです。こうした講習会があれば、ちょっとした付き合い方がわかる。ちょっとした気づきが生まれるだけでも大きな変化になるはずだろうと語られます。

時代は、以前はバリアフリー、そしてユニバーサルデザイン、今は「ハードからハート」へと移り変わってきているのです。

そして田中市長のごく個人的な経験からの想いも熱く語られました。田中市長は利賀村生まれ。ご自宅の近所には、障害を持つ子供がいたとのことです。その子供が毎日、元気よく「おはよう!」と声をかけてくれる。この挨拶だけで、いったい何人の人が助けられたのか。
人間には「上」や「下」はないのだと強く語られます。みんな同じ。いわば球体の中に存在しているという喩えです。球体の中で生きていると、ときどき上になったり下になったりすることもある。それでも全員が同じ球体に中にいて、一人として必要のない人はいないのだと。つまり、世の中、全員が必要。

田中市政のまちづくりのひとつのキーワードもご紹介いただきました。「いいところはもっと伸ばしましょう!課題はチャンスだと思いましょう」ということです。まさに今回のトークセッションのテーマそのものです。
その人がいるから私たちが元気になり、私たちがいるからその人が元気になるという人と人とのつながりを大切に考えていきたいという想い。世の中には資本がたくさんあるはずです。
世の中はマネー資本主義になっているかもしれない。しかし、人と人とのつながりが大切と考えれば、人材資本、自然資本、文化資本など、さまざまな資本がたくさんあることに気付くはずです。
もっともっと市民満足度や幸福度を高めていきたい、南砺の価値が高めていきたいと語る田中市長の目線は未来だけでなく、古き良き時代へも及んでいます。
最後に、こう語られます。私たちの豊かな未来は昔にヒントがあるのだと。量から質へとギアチェンジしていこう。
これからどんどん新たな多数派を増やしていくことが大切になっていく。まちづくりの合意形成にあたって新しい多数派、すなわち今日のテーマでもある自閉症や発達障害に人たちへの理解がある人を増やしていくことが必要なのだということで、今回の三方の語りが締められました。

左から水内さん、田中市長、東さん、進行の柴垣  お隣の囲炉裏の部屋でも何人もの方が耳を傾けて

 

さて、このあとは参加者のみなさんとのトークセッションとなり、実にさまざまなところに話が展開していくライブ感たっぷりの時間となったわけですが、こちらは参加者だけの特典的お楽しみということで、ここでのご披露はご容赦くださいませ。

最後には、世界中でライトアップされている映像と、この企画にご協力いただいたみなさんの想いを込めた動画を見ていただきました。

動画はこちら⇒https://www.youtube.com/watch?v=nkKbobIESHo&feature=youtu.be

一人ひとりの想いは、もしかしたら小さな灯かと思っているかもしれませんが、こうして集まることで、ライトアップしていく大きな光になっていくのだということを確信したセッションになりました。
ご協力くださいましたみなさま、ご参加のみなさま、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

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